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グランド・フィナーレ (講談社文庫)
阿部 和重発売日:2007-07-14
登録ユーザー:1user
カテゴリ:本
講談社
定価 ¥490
amazon価格¥490 中古価格 ¥136 から
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EXPOレビュー
amazonでのレビュー
レビュー数 52件実在の町「神町」が阿部和重を飲み込む/Gori ★★★
著者が作った架空で実在の街,神町。
阿部氏は,この脳の中の町で,神として振る舞い、
人と町の関係に鉄槌を下すつもりだったのだろうが、
逆にしっぺ返しを食らって,
街はすごく薄っぺらなものとなった。
作家の想像力と言うより,シムシティが作った町のようだ。
そろそろ、芥川賞を上げておかないと息切れになる、
ということか。
阿部和重は表題作「グランド・フィナーレ」で芥川賞を受賞した。出版当時、私は、主人公がロリコンであるという設定(意図的なものであるはずだが)にあまり興味がわかず、阿部のファンだから購入はしていたものの、ずっと「積ん読」にしてあった。しかし、どこだったかに、この作品が阿部の最新長編『ピストルズ』のプロローグ的な役割を果たしているというようなことが書かれてあり、あわてて読み始めたのだった。
さて、この作品が芥川賞に値する作品かどうか、また阿部の最高傑作かどうかということは措いておいて、作品自体は決して他のレビュアーの方々が苦言を呈されているほど悪い作品ではないように私には思えた。特に構成がしっかり練られており、後半の「フィナーレ的なもの」に向かう緻密な流れはすばらしかった。また、結末はオープンエンドというか、なんともあいまいな終わり方をしているが、そういう手法を選んだことを私は「あり」だと思った。
蛇足だが、本書に収められている短篇「馬小屋の乙女」の英訳が数年前にアメリカで出版されているある雑誌に載ったことがある。そのバックナンバーはもう品切れで手に入らないだろうが、私はその英訳版も非常に気に入っている。吉本ばなななどを多く英訳しているMichael Emmerichという人が訳しているのだが、このクセの強い作品を饒舌な英語の文語体でうまく翻訳しており見事だと思った。興味のある向きはどこかでご一読を。
冒頭からいきなりピンクのウサギと青い子グマが登場する。
『レモン風味のドロップみたいな味がする雨粒』など、
表現は可愛らしいが、悉く・恰も・纏る・齎す‥などの
難漢字を多様する文章。
そして主人公の“性癖”のおぞましさと気味悪さ。
あきらめずに読み進めていくと再生していく希望の光が見えてくる。
受け入れがたい“性癖”に焦点を当てながら、
しっかりと彼を非難してくれるIという女性を登場させた点が救い。
作者は新人の時から小説を発表するたびに何かの賞を受賞しているが
この作品でMDMA(合成麻薬)をディティールとして持ってくるのはどうか?
作者が服用していないことを望みます。そしてあの“性癖”でないことも!
ロシアの劇場人質事件も、ロリータ男もMDMAも、この本を読む平凡な一市民には、等価にリアルで、等価にシュールな意味しか持ちえない。そういう事件がモスクワで起きた、そんな性向の人間がいる、そうしたドラッグがはやっている、という「情報」としてしか受け取っていないからだ。ところが、こうした一見バラバラで無関係なファクターを並列させるだけで、この作家は「ヘン」(解説で高橋源一郎氏が説いているように)なリアリティを帯びた物語を鮮やかに立ち上がらせる。世界は巨視的、あるいは長期的に見れば、すべて共時的につながっているのかもしれない、と思わされた。好きなタイプとは言えないが、すごい作家がいるものだなあと遅まきながら脱帽。




